Slackの通知音で胃が痛くなってたエンジニアが、バーンアウト手前から回復した話

デプロイのたびに心拍数が上がる、コードを書くのが苦痛になる——そんな状態から抜け出すまでに試した方法を、失敗談も含めて正直に書きました。

去年の年末、正直まずいと思った。デプロイのたびに心拍数が上がって、Slackの通知音を聞くだけで胃が痛くなる。コードレビューのコメントを書くたびに「これで相手を傷つけたりしないか」って余計な気を遣う。何より、好きだったはずのコードを書くことが苦痛になっていた。

それまで「ストレス?まあうまくやってるっしょ」って思ってた自分が、典型的なバーンアウトの手前にいたわけだ。この半年で試行錯誤した結果、今は随分マシになった。科学的にも一定の裏付けがある方法と、「これは自分には合わなかった」という正直な失敗談も含めて全部書く。


まず、自分のストレス状態を「見える化」することから始めた

エンジニアとして10年以上やってきて、ストレス管理に関して一番失敗してきたのが「気合いで乗り切ろうとする」だったと思う。インシデント対応が続いて寝不足が3日続いても「まあ終われば休める」って思いながら走り続けるやつ。インシデント対応の現場では特にこれが顕著で、SREとしての義務感がそれに輪をかける。

2026年に入ってから最初にやったのが、ウェアラブルデバイスのデータをちゃんと読むことだった。Apple Watch Ultra 2のHRV(心拍変動)トレンドを毎朝確認する習慣をつけた。HRVは自律神経の状態を反映する指標で、値が低いほどストレスや疲労が蓄積しているサインになる。

# Pythonで自分のHealthKitデータを可視化するスクリプト(エクスポートしたXMLから)
import xml.etree.ElementTree as ET
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
from datetime import datetime

def parse_hrv_data(xml_path: str) -> pd.DataFrame:
    tree = ET.parse(xml_path)
    root = tree.getroot()
    
    records = []
    for record in root.findall('.//Record[@type="HKQuantityTypeIdentifierHeartRateVariabilitySDNN"]'):
        records.append({
            'date': datetime.strptime(record.get('startDate')[:10], '%Y-%m-%d'),
            'hrv': float(record.get('value'))
        })
    
    df = pd.DataFrame(records)
    return df.groupby('date')['hrv'].mean().reset_index()

# 週単位で移動平均を取ると傾向が見やすい
df = parse_hrv_data('export.xml')
df['hrv_7d_avg'] = df['hrv'].rolling(window=7).mean()
print(df.tail(14))

これを実際にやり始めたら、「毎週木曜〜金曜にHRVが急落してる」というパターンが見えた。うちのチームのスプリントレビューが木曜で、翌金曜のリリースへのプレッシャーが数値に出てたわけだ。感覚ではうっすら気づいてたけど、データで見ると「あ、これ本物のストレスだったんだ」ってなる。

xychart-beta
    title "HRV週次推移(架空のサンプルデータ)"
    x-axis ["1月", "2月", "3月", "4月", "5月"]
    y-axis "HRV (ms)" 20 --> 70
    bar [42, 38, 35, 48, 56]
    line [42, 38, 35, 48, 56]

3月までは下がり続けてて、4月以降に反転してる。この折り返し点がちょうど「まずい」と気づいて対策を始めた時期と重なってる。「ストレスを感じる」という主観的な感覚より、データで「今週は回復できてない」と把握できる方が、エンジニア的には圧倒的に対処しやすい。正直これだけでかなり変わった。


「これは効く」と本当に思えた3つの方法

1. 物理的な運動(ただし「義務感」で続けようとすると失敗する)

運動が効くのはもう疑いようがない。2026年の研究でも有酸素運動がコルチゾール(ストレスホルモン)を下げ、BDNFという神経成長因子を増やすことが繰り返し確認されている。問題は「わかってるけど続かない」ことで、ここが一番重要なんですよね。

僕の場合、ジムを契約して月4回しか行かないというお決まりの失敗を2年繰り返した後、今年から完全に発想を変えた。自宅筋トレと、「通勤がわりの30分ウォーキング」だけに絞った。ポイントは「ストレス解消のための運動」ではなく「移動手段」として位置づけたこと。目的を変えたら義務感が消えた。

ただ正直に言うと、これが効いた理由の半分は「外の空気を吸う」ことだったと思う。在宅勤務でずっと部屋にいると、知らないうちに思考がループする。在宅勤務の環境づくりをいくら整えても、外に出る時間を意図的に作らないと頭が詰まる感覚がある。

2. 「作業ログ」を終業時に5分書く

これは最初「日記?いや違う」と思って懐疑的だったんだけど、試したら地味にマジで効いた。

やること自体はシンプルで、今日やったこと・明日やること・頭から離れないことの3項目を5分で書いて業務終了する。Notionのシンプルなテンプレートに書くだけ。

## 2026-05-04 作業ログ

### 今日やったこと
- DB接続プールの設定見直し(Aurora PostgreSQL)
- PR #342 レビュー → 承認待ち
- 障害調査:Lambdaのタイムアウト頻発の原因特定

### 明日やること
- #342 マージ後のstaging確認
- SLOダッシュボードのアラート閾値調整

### 頭から離れないこと(書いて手放す)
- コードレビューのコメントが厳しすぎたかも → 明日フォローを入れる
- リリース前の不安 → 手順書は完成してる、あとは信頼するだけ

これ、「頭から離れないこと」のセクションが肝で、書いて視覚化すると不思議とループが止まるんだよね。GTD(Getting Things Done)の考え方に近くて、仕事の不安を「外に出す」ことで脳のワーキングメモリを解放する感覚がある。認知行動療法の考え方とも重なる部分があって、「思考を書き出す」という行為自体が認知的な再構成を助けるらしい。

3. 意図的な「何もしない時間」を予定に入れる

これが一番エンジニアに刺さらない提案だと思う。「何もしない?生産性ゼロじゃん」ってなるから。でも2025年末にバーンアウト寸前になった原因を振り返ったら、休日もTech系のPodcastを聞いたり、GitHubを眺めたりしてて、脳が一切休んでなかった。

今は週に1回、2時間のカレンダーブロックを「何もしない枠」として入れてる。スマホも置いて、ぼーっとコーヒーを飲む。最初の数週間は「もったいない」という罪悪感がすごかったけど、慣れてきたら逆に翌日のコードの質が上がった。デフォルトモードネットワーク(DMN)が活性化して、創造性や問題解決能力が回復するという話は、神経科学的には2026年時点でかなり強いエビデンスがある。個人的には、この「何もしない枠」が3つの中で一番キツかったし、一番効いた。


試したけど自分には合わなかったもの(正直に書く)

ポジティブなことだけ書いても参考にならないので、失敗談も書いておく。継続できたものは全体の3割ちょっとで、半分近くは「一時的に効いたが続かなかった」という結果だった。

pie title 試したストレス解消法の継続率
    "継続できた" : 35
    "一時的に効いたが継続失敗" : 40
    "最初から合わなかった" : 25

瞑想アプリ(Calm・Headspace系):3ヶ月試したけど、「今ここに集中しなければ」というプレッシャーで逆にストレスになった。これは好みが分かれると思う。集中力が高いタイプのエンジニアには向かないのかもしれない。

サウナ:「整う」感覚は本物だし、実際に副交感神経が活性化するのは確かだと思う。ただ週2〜3回通える距離に施設がなかったので習慣化に失敗した。都市部に住んでる人には効くかもしれない。

カフェインゼロ生活:2週間やったけど、午後の集中力が壊滅して仕事にならなかった。コーヒーを1日1〜2杯に減らすことで落ち着いた。完全に断つ必要はないんだと思う。

皆さんはどうしてます?「これだけは続いてる」みたいなのがあれば教えてほしい。ストレス解消って本当に個人差が大きくて、万能な答えがないんですよね。


チームレベルでやって効果があったこと

個人の話だけだと片手落ちなので、うちのチームで取り組んだことも書いておく。

まず、スプリントの振り返りの中に「今週のしんどかった度(1〜5点)」を入れた。最初は誰も正直に書かないんじゃないかと思ったけど、シニアの僕が「今週は4点でした、水曜の本番障害がきつかった」と正直に書いたら、だんだんメンバーも書くようになった。

施策効果(主観)導入コスト継続性
スプリント振り返りにストレス指数追加★★★★☆低(10分追加するだけ)
週1のノーミーティングデー★★★★★中(調整が必要)
障害対応後の強制バッファタイム★★★☆☆
1on1でのメンタル確認★★★★☆
チームSlackでの「今日しんどいです」投稿OK文化★★★☆☆

一番効いたのは「週1のノーミーティングデー」だった。水曜日を会議ゼロにして、深い集中作業だけにする日を確保した。最初は「緊急の場合は入れていい」という例外規定を作ったら、毎週必ず誰かが例外を使ってぐし崩れするので、「緊急以外は絶対に入れない」という運用に変えた。ルールはシンプルな方が強い、というのを改めて実感した。

心理的安全性の話は昔から言われてきたけど、2026年時点では「何を言っても大丈夫な雰囲気」だけじゃ足りなくて、構造的に「しんどいと言えるタイミング」を設計しないと機能しないと実感してる。

flowchart TD
    A[個人のストレスシグナル] --> B{可視化できてるか?}
    B -- No --> C[HRV・作業ログで計測開始]
    B -- Yes --> D{パターンは特定できてるか?}
    D -- No --> E[トリガーを特定する]
    D -- Yes --> F{チームと共有できてるか?}
    F -- No --> G[心理的安全性の設計]
    F -- Yes --> H[個人+チームの対策を実施]
    C --> D
    E --> F
    G --> H
    H --> I[定期的なHRV・ストレス指数の振り返り]
    I --> B

このフローで見てもらえるとわかるけど、「個人で頑張る」と「チームで解決する」の両輪が必要で、どちらかだけだと限界がある。バーンアウト対策として認知行動療法的なアプローチが有効なのはわかってるけど、根本の環境が変わらなければ対症療法になってしまう。


2026年に新しく使い始めたツール・アプリ

まだ検証中のものもあるけど、半年使ってある程度評価できるものをまとめておく。値段の割に費用対効果が高いと感じたのはOura Ring とDaylioの2つで、逆にEndelは合う合わないがはっきり分かれると思う。

ツール/アプリ用途月額評価コメント
Oura Ring Gen4HRV・睡眠の計測¥800(アプリ)★★★★★Apple Watchより睡眠精度が高い
Notion(作業ログ)終業ログ無料〜★★★★☆シンプルな使い方が一番続く
Endel集中・リラックス音楽¥1,200★★★☆☆合う人と合わない人が分かれる
Daylio気分トラッキング無料〜★★★★☆1日30秒でパターンを可視化できる
自作PythonスクリプトHRVデータ分析無料★★★★★好きな人はやると楽しい

Oura Ring Gen4は値段がネックだけど(本体4万円前後)、睡眠の質と回復スコアの精度が明らかにApple Watchより高くて、「今日は仕事を詰め込んでいい日か、温存する日か」を朝に判断できるようになった。これは地味に便利というか、もっと早く使い始めればよかったと思ってる。

xychart-beta
    title "ストレス対策導入後の主観的ストレスレベル推移(10点満点)"
    x-axis ["1月", "2月", "3月", "4月", "5月"]
    y-axis "ストレスレベル" 0 --> 10
    bar [8, 7, 6, 5, 4]
    line [8, 7, 6, 5, 4]

数値は完全に主観だけど、1月の8から5月の4まで下がってきてる感覚は本物だと思う。完全に解消はしてないし、大きな障害があった週はガクッと上がる。でも「元に戻る力」が明らかに速くなった。これがレジリエンスって言葉の意味なんだろうな、と最近ようやく実感してる。


まとめ

この半年で学んだことを整理するとこうなる。

  1. まず「計測」から始める — HRVや気分ログで自分のストレスパターンを可視化する。感覚だけでは「気合いで乗り切る」ループから抜け出せない

  2. 継続できる方法は人によって全然違う — 瞑想が合う人もいれば、散歩だけで十分な人もいる。「科学的に正しい方法」を義務感でやるより、「なんとなく続けられてること」を伸ばす方が現実的

  3. 終業ログ5分は本当に効く — 脳内でループしてる不安を書き出して手放すだけで、オフモードへの切り替えが劇的に早くなる

  4. チームの構造を変えないと個人の努力には限界がある — 心理的安全性は「雰囲気」じゃなく「設計」が必要

  5. 「何もしない時間」を意図的に予定に入れる — 休息を「余った時間でやるもの」にしている限り、エンジニアは永遠に休めない

もしこの記事を読んで「自分もやばいかも」と思った人は、まず終業ログだけ試してみてほしい。ツールもアプリも不要で、メモ帳に3行書くだけでいい。それだけで何かが変わると思う。

ストレスとうまく付き合えてるエンジニアって、別に強靭なメンタルを持ってるわけじゃなくて、「仕組みで回してる」人が多い気がする。運動習慣の自動化と同じで、意志力に頼らない設計にすることが全てだと今は思ってる。

皆さんのストレス解消法、ぜひ教えてください。

U

Untanbaby

ソフトウェアエンジニア|AWS / クラウドアーキテクチャ / DevOps

10年以上のIT実務経験をもとに、現場で使える技術情報を発信しています。 記事の誤りや改善点があればお問い合わせからお気軽にご連絡ください。

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