ブラウザ拡張機能を棚卸ししたらチームの景色が変わった話【2026年版】
「みんなの拡張機能、バラバラすぎ問題」に気づいたエンジニアが6ヶ月かけて整理した記録。Manifest V3移行後の地雷や、使えるAI統合拡張機能の実態をチームの視点で語ります。
半年前、うちのチームで「ブラウザ拡張機能の棚卸し」をやったんですよね。きっかけは些細なことで、新メンバーのオンボーディング資料を作っていたときに「あなたのブラウザには何が入ってますか?」という話題になって、チームメンバーそれぞれの拡張機能リストを共有してみたら、びっくりするくらいバラバラだった。
Aさんは40個以上インストール済み、Bさんは7個だけ。しかも重複しているのはほぼゼロ。「これは整理しないとまずいな」と感じたのと同時に、「お互いが知らない便利ツールを掘り起こすチャンスだ」とも思った。
そこから約6ヶ月、チームで使う拡張機能を実際に試しながら絞り込んでいった。その記録を残しておこうと思う。2026年時点の情報ベースで、特にAI統合まわりは去年と比べて大きく変わっているので、「古い情報で選んでた」という人にも参考になるはずだ。
2026年のブラウザ拡張機能事情、何が変わったか
正直に言うと、2024〜2025年にかけてChrome拡張機能のManifest V3移行が完了したことで、旧来の拡張機能の多くが壊れるかアップデートが滞るかして、一度整理のタイミングが来た。うちのチームでも「気づいたら動いてない拡張機能がある」という状態になっていた。
Manifest V3移行の影響をざっくりまとめるとこんな感じ:
| 変化点 | Manifest V2(旧) | Manifest V3(新) |
|---|---|---|
| バックグラウンド処理 | Persistent background pages | Service Worker(非永続) |
| リクエスト変更 | webRequest API(ブロック可) | declarativeNetRequest |
| リモートコード実行 | 許可 | 禁止 |
| セキュリティリスク | 相対的に高い | 低減 |
| 広告ブロッカーへの影響 | 軽微 | 大きい(一部機能制限) |
それに加えて、2025年後半から「AI統合型拡張機能」が急速に増えた。WebページのコンテキストをLLMに渡してその場で要約・翻訳・質問応答する系のやつ。去年は「なんか使いにくいな」という印象だったんだけど、2026年に入ってからAPIの応答速度が劇的に改善されて、実用レベルになってきた感覚がある。
xychart-beta
title "ブラウザ拡張機能カテゴリ別利用率の変化"
x-axis ["AI統合", "開発者ツール", "セキュリティ", "生産性", "広告ブロック"]
y-axis "チーム内利用率 (%)" 0 --> 100
bar [72, 95, 88, 65, 91]
上はうちのチームで半年かけて整理した後の利用率。開発者ツールとセキュリティ系は全員ほぼ入れている。AI統合系はまだ賛否あって「自分は使わない派」もいる。正直、まだ全員に刺さっているわけじゃないけど、試してみてよかったという声は確実に増えてきた。
実際に残った拡張機能と本音レビュー
6ヶ月かけて試して、チームに定着したものだけを挙げていく。「定着した」の基準は「1ヶ月後も使い続けていた人が7割以上」。地味に厳しめの基準だけど、これくらいフィルターしないと玉石混交になる。
開発者・デバッグ系
Requestly(旧: ModHeader後継的な立ち位置に) HTTPリクエストのヘッダー書き換え、リダイレクト設定、モック応答ができる。API開発中に「本番のAuthorizationヘッダーをそのままローカルに流したい」「特定パスだけ別エンドポイントに向けたい」という場面が頻繁にあって、これが地味に便利。Manifest V3対応も早かったのが好印象。
React Developer Tools / Vue DevTools 今さら説明不要だけど、2026年版でReact Server Componentsのデバッグに対応した点は注目。Server ComponentとClient Componentの切り替わりがツリー上で見えるようになって、React Server Componentsのアーキテクチャ設計を試行錯誤している人には特に助かる。
EditThisCookie3 クッキーの確認・編集。古参だけどManifest V3対応版が出て復活した。セッション管理のデバッグ時にこれがないと困るので、地味に助かっている。
JSON Viewer Pro APIレスポンスのJSONを整形表示してくれる。折りたたみ・コピー・クリップボードへの書き出しがスムーズ。開発中にブラウザで直接APIを叩くとき、生のJSONが読めないのはストレスなのでほぼ全員入れた。個人的にはこれが「なんで今まで使ってなかったんだ」枠。
AI統合系
ここが一番変化が大きいカテゴリだ。正直、2024年時点では「便利そうだけど動作が重い」「誤訳が多い」「プロンプトの自由度が低い」という感じで、積極的に使う気になれなかった。2026年現在は印象がだいぶ変わってきた。
Sider AI(v5.x) ページの要約、テキスト選択からの質問、多言語翻訳を一括でやってくれる。GPT-4o、Claude 3.7 Sonnet、Gemini 2.5 Pro を切り替えて使えるのが便利で、「このドキュメント、Claudeで読んでみたい」という使い分けができる。ただ課金体系が少し複雑になったので注意。よく使う操作の流れはこんな感じ:
# Sider AIでよく使う操作の例
# ページ全体を要約してSlack貼り付け用に整形する場合
1. ページ上で右クリック → 「Siderで要約」
2. 出力形式を「箇条書き + 3行サマリー」に設定
3. 「Slackに最適化」トーンを選択
4. コピーして共有
# 所要時間:約8秒(GPT-4o使用時)
Perplexity AI拡張 ブラウザで見ているページについてその場で質問できる。「このAPIドキュメントで言っているXXXって何?」みたいな調べ方が快適になった。ただ技術系の深い質問だとハルシネーションが混じることがあるので、「補助として使う」スタンスを崩さないようにしている。
最初は懐疑的だったメンバーも、英語技術文書を読む速度が上がったと言い始めたので、これは継続確定になった。
セキュリティ・プライバシー系
セキュリティ関連の拡張機能は「過信しない」前提で使うのが鉄則だ。OWASP Top 10の対策を実装している立場からすると、クライアントサイドのセキュリティはあくまで補助的なもので、これだけに頼るのは危険。そのうえで使っているのが以下の3つ。
uBlock Origin(Lite版) Manifest V3に対応した軽量版。従来版ほどの機能はないが、広告・トラッカーブロックとしては十分機能する。MV3制約のせいで細かい設定が減ったのは正直不満だけど、まあ実用的。
Privacy Badger EFFが出しているトラッカーブロック。学習型なので使えば使うほど精度が上がる設計で、uBlock OriginとPrivacy Badgerを併用しているメンバーが多い。
Bitwarden拡張(パスワードマネージャー) 1Passwordを使っているメンバーもいるが、チームとしてはBitwardenを推奨にした。オープンソースで自前ホスティングも可能、SOC2対応運用の観点からも監査しやすい点が決め手だった。
生産性系(ここが一番好み分かれる)
生産性系は向き不向きが激しいので、正直「全員に薦めるのはやめた」カテゴリでもある。試してみて合う人が使えばいい、というスタンスで落ち着いた。
Vimium C キーボードだけでブラウザを操作できるようにする拡張機能。「f」キーを押すとページ上のリンクに記号が付いて、その記号を打つとリンクを踏める。慣れると本当に速い。ただし学習コストがあるので「強制しない、好きな人は使う」というスタンスにした。
Tabli(タブ管理) タブが増えすぎる問題、皆さんありませんか?Tabliはウィンドウ・タブの一覧管理と名前付けができる。「AWSコンソール作業用」「PRレビュー用」みたいにウィンドウに名前をつけて管理すると、頭の中の整理にもつながってくる。個人的にはこれが一番「地味に便利」の筆頭候補。
Wappalyzer Webサイトで使われている技術スタックを検出してくれる。競合サービスや参考にしたいサイトの技術選定を調査するときに使う。「このサービス、Vercelで動いてるのか」「CloudFront使ってるな」とかがすぐわかる。調査系の仕事が多い人はマジで便利。
チームで標準化するときにハマった落とし穴
「こういう拡張機能を全員入れよう」という話をするとき、実は結構面倒なことがある。ブラウザが統一されていないチームだと特に。
flowchart TD
A[拡張機能を統一しよう!] --> B{ブラウザが統一されているか?}
B -- Chrome派 --> C[Chrome Web Store]
B -- Firefox派 --> D[Firefox Add-ons]
B -- Safari派 --> E[Safari拡張機能]
B -- Edge派 --> F[Edgeアドオン]
C --> G{同じ拡張機能が存在するか?}
D --> G
E --> G
F --> G
G -- ある --> H[バージョンが同じか確認]
G -- ない --> I[代替を探す or 諦める]
H -- OK --> J[設定のエクスポートができるか?]
J -- できる --> K[設定共有で標準化]
J -- できない --> L[ドキュメントに設定値を書く]
I --> M[ブラウザごとに別の推奨リストを作る]
うちのチームはChrome・Firefox・Edge(主にWindows利用者)が混在している。Chromeにしかない拡張機能を「全員入れて」と言っても使えない人が出てくる。なので「推奨リスト」と「全員必須リスト」を分けることにした。
| カテゴリ | 全員必須 | 推奨(任意) |
|---|---|---|
| パスワード管理 | Bitwarden | 1Password(既存ユーザーのみ) |
| 開発ツール | React/Vue DevTools | Requestly |
| セキュリティ | uBlock Origin Lite | Privacy Badger |
| AI支援 | なし(任意) | Sider AI / Perplexity |
| 生産性 | なし(任意) | Vimium C / Tabli |
「全員必須」は3つだけにした。それ以上増やすと管理が追いつかないし、「あれも入れろこれも入れろ」になると反感が出る。経験上、推奨リストに留めておいた方が自然と広まる。強制するより、「使ってみたら良かった」という口コミの方がよっぽど定着する。
あと、セキュリティ的に注意したのが拡張機能の権限確認を必ず行うこと。特にAI系の拡張機能は「全ページのデータを読める」権限を求めてくるものが多くて、社内の機密情報を扱うページで動かすのは慎重になった方がいい。
# 危険な権限の例(Chromeの場合)
"permissions": [
"tabs", # タブのURL・タイトルを読める
"<all_urls>", # 全URLでコンテンツを読み書きできる ← 要注意
"storage", # 拡張機能のローカルストレージ
"webRequest" # HTTPリクエストを傍受できる ← 超要注意
]
# 最低限確認すること
# 1. 開発元が明確なオープンソースか
# 2. Chrome Web Storeのレビューと評価
# 3. プライバシーポリシーでデータがどこに送られるか
# 4. <all_urls> が必要な理由が明確か
社内のセキュリティポリシーによっては「業務ブラウザにはAI拡張機能は入れない」という判断もあり得る。これは好みと環境によって変わるので、チームで話し合って決めるのが一番いい。
2026年に注目している拡張機能(まだ検証中)
正直まだ判断しきれてないけど、いくつか気になっているものを挙げておく。
Arc Boost系の機能をChromeで再現する拡張機能 Arcブラウザのスペース機能やBoostを他ブラウザで再現しようとする拡張機能がいくつか出てきた。Arcそのものを使えばいいじゃないかという話だけど、仕事で「Chrome必須」な環境もあるのでこういうニーズは一定数ある。まだ使い勝手はまちまち。
GitHub Copilot Browser Extension GitHub CopilotがIDE以外にもブラウザ拡張として展開してきた。GitHubのPRレビュー画面でコードへの質問ができるようになった。AIコーディングアシスタントを本番で6ヶ月比較した記事でも書いたけど、PRレビューの文脈理解が格段に楽になる感じはある。まだ正式利用の判断は保留中。
Manifest V3対応した広告ブロッカーの代替 従来のuBlock Originの機能をMV3制約の中でどれだけ再現できるか、各拡張機能が競っている状態。AdGuard MV3版やuBO Liteがそれぞれ改善中で、2026年後半にまた選択肢が変わりそうな気がしている。
pie title 2026年ブラウザ拡張機能カテゴリ別シェア(うちのチーム内)
"開発者ツール" : 35
"セキュリティ・プライバシー" : 28
"AI統合" : 22
"生産性・タブ管理" : 15
AI統合系が全体の22%まで来ているのは正直驚いた。1年前は「試しに入れたけど使ってない」という人が多かったのが、今は「ないと困る」という声が増えてきた。この変化のスピードはちょっと予想外だった。
まとめ
6ヶ月かけて整理してわかったことをまとめると、こういうことだった。
1. Manifest V3移行でリセットのチャンスが来た 旧来の拡張機能が動かなくなったこのタイミングで「本当に必要なもの」を選び直すのは良い機会だった。「なんとなく入れてたままの拡張機能」を一度全部アンインストールして、必要なものだけ再インストールするのをおすすめしたい。
2. チームで統一するなら「全員必須」は少なく パスワードマネージャー+セキュリティ+開発ツール(フレームワーク固有)ぐらいに絞る。それ以外は推奨にとどめた方が定着率が上がる。
3. AI系拡張機能は2026年が実用元年かもしれない 2024〜2025年は「遅い・誤訳・不安定」という印象が強かったが、レスポンス速度と精度の改善で「使えるレベル」になってきた。特に英語技術文書の読み込みが速くなる体験は一度試してほしい。
4. セキュリティ権限の確認は必須
<all_urls> 権限を要求する拡張機能は特に注意。業務データを扱うページで何が動いているか把握しておく。
5. 「入れたまま使ってない」を定期的に整理する 半年に一度、拡張機能の見直しをカレンダーに入れるのがおすすめ。使っていないものを消すだけでブラウザが軽くなることも多いし、何より「これ何だっけ」という拡張機能がセキュリティリスクになる可能性もある。
今日の午後でいいので、インストール済みの拡張機能リストを開いてみてほしい。「これ何だっけ?」というものが絶対いくつかあるはずだ。まずそれを整理するところから始めると、チームの生産性ツールの組み合わせを整理した話でも触れたように、じわじわと効果が出てくる。
皆さんはどんな拡張機能を使っていますか?特にAI系で「これは外せない」というものがあれば教えてもらえると嬉しい。