エンジニアのセルフケア、3年間の失敗と「続く仕組み」にたどり着いた話

「自分は大丈夫」と思いながら深夜2時まで働いていたあの頃。瞑想アプリもジムも続かなかった自分が、意志力ではなく構造で習慣を作れるようになった3年間の記録。

「ちゃんと休んでますか?」が刺さらなかった理由

3年前、うちのチームで立て続けに2人が長期休職した。どちらも優秀なエンジニアで、傍から見ればそれほど無理をしているようにも見えなかった。でも当事者は静かに限界に近づいていた。

当時の自分はといえば、「自分は大丈夫」と思い込みながら、深夜2時まで設計書を書いて、翌朝10時にSlackで返信してた。正直、疲れてるのかどうかもよくわからない状態だった。身体は動いてるし、コードも書ける。でも何かが少しずつ、確実に削れていく感じがあった。

そこから3年間、セルフケアの習慣を作ろうと試行錯誤してきた。最初は「瞑想アプリを入れれば解決」みたいなノリで始めて、見事に2週間で挫折した。今は少しだけ違う状態にある。完璧には程遠いけど、「続いている」という実感がある。その経緯を書いておこうと思う。


失敗から学んだ:意志力ではなく「構造」で習慣を作る

最初の2年間で試してダメだったことを正直に列挙する。

試したこと結末
瞑想アプリ(Headspace・Calm)起動するのが面倒で3日で止まる
ジム会費を払う月2〜3回しか行かず、罪悪感だけが増える
日記を書く書くことが思い浮かばず白紙で終わる
「早寝する」という決意0:30に「あと少しだけ」が止まらない

並べてみると、共通の失敗パターンが見えてくる。意志力に依存した設計になっている、ということだ。

仕事でも同じことを学んでいたはずなのに、なぜかセルフケアだと「気合いでやる」思考になってしまう。エンジニアが運動習慣を続けるコツでも書いたように、習慣化の本質は意志じゃなくて仕組みだ。この認識を改めてから、少しずつ変わり始めた。

2026年時点で自分が実際に続けている習慣の全体像はこんな構造になっている。

flowchart TD
    A[朝6:30 起床] --> B[光療法ランプ15分]
    B --> C[水500ml + ストレッチ10分]
    C --> D[仕事開始]
    D --> E[25分作業 × Pomodoroタイマー]
    E --> F[12:30 昼食・外出20分]
    F --> G[午後作業]
    G --> H[17:00 強制Slack退出]
    H --> I[夕方: 筋トレ or 散歩30分]
    I --> J[21:00 ブルーライトカット]
    J --> K[22:00〜 読書 or 入浴]
    K --> L[23:30 消灯]

    style A fill:#4CAF50,color:#fff
    style H fill:#FF9800,color:#fff
    style L fill:#2196F3,color:#fff

ポイントは「やること」より「やめること」を先に設計したことだ。特に「17:00 強制Slack退出」は最初かなり抵抗があったが、3ヶ月続けたら問題が起きたのはゼロ回だった。個人的にはこれが一番効いた。


2026年時点で実際に使っているツール・デバイス

ここ1〜2年でセルフケア周りのプロダクトが劇的に進化している。自分が実際に使って「これは続く」と思ったものだけを挙げておく。

睡眠・回復系

ツール・デバイス用途使用期間評価
Oura Ring Gen4睡眠スコア・HRV計測14ヶ月⭐⭐⭐⭐⭐
Hatch Restore 3光目覚まし・入眠サポート8ヶ月⭐⭐⭐⭐
Eight Sleep Pod 4マットレス温度調節4ヶ月⭐⭐⭐(高価すぎる)
f.lux / iOS夜間モードブルーライト自動カット常時⭐⭐⭐⭐

Oura Ring Gen4はマジで助かっている。昨年から追加されたストレス指数(Stress Level)の計測が地味に便利で、「今日はHRVが低いから無理しない」という判断ができるようになった。以前は「疲れてる気がするけど気のせいかな」と思いながら頑張り続けてしまっていた。

睡眠トラッカー3ヶ月運用で気づいた話にも書いたが、スコアを見るだけでは意味がない。スコアを「判断のトリガー」にする仕組みが必要だ。

メンタル・集中系

メンタルヘルス系アプリは2026年に入ってから急速にAI統合が進んだ。自分が試した中で実用的だったのは以下の2つ。

Woebot Health(2026年版) 認知行動療法(CBT)ベースのAIチャットアプリ。「今日しんどい」と入力すると、CBTの技法に沿った質問を返してくれる。最初は「AIに相談するって…」と懐疑的だったけど、3ヶ月続けてみたら、自分の思考パターンがかなり明確に見えてきた。特に「認知の歪み」を可視化してくれる機能が役に立っている。

Reflect(AI日記アプリ) 音声入力→AI要約→感情ラベリングまで自動でやってくれる。日記が続かなかった最大の理由が「書くことを考えるのが面倒」だったので、音声で喋るだけにしたらあっさり続いた。これは正直、自分には向いていたと思う。

認知行動療法でITエンジニアのバーンアウト対策でも詳しく触れているが、CBTは独学でも効果がある。ただし、正直まだ「これで完璧」という感触はない。特に繁忙期はどうしても崩れる。


実際の睡眠スコアの変化(14ヶ月の記録)

Oura Ring導入前後でどれくらい変わったかを数値で示しておく。

xychart-beta
    title "月別睡眠スコア(Oura Ring)"
    x-axis ["2025/04", "2025/05", "2025/06", "2025/07", "2025/08", "2025/09", "2025/10", "2025/11", "2025/12", "2026/01", "2026/02", "2026/03", "2026/04", "2026/05"]
    y-axis "睡眠スコア" 50 --> 90
    line [62, 61, 65, 58, 63, 70, 72, 75, 68, 78, 79, 81, 82, 84]

2025年7月〜8月にスコアが下がっているのは、夏の案件ラッシュで生活リズムが完全に崩れた時期だ。これはある意味、正直に反映されていた。その後、強制17時退出ルールを本格導入してから少しずつ回復してきた。

60点台→80点台と数字が変わったことより、「なんとなく疲れが取れない感じ」が減ったことの方が体感として大きい。数値化することで「今日は無理しない」という判断ができるようになるのが一番のメリットだと思っている。


「会社員エンジニア」特有の難しさと、実際に機能した対策

セルフケアの話題だと「個人の習慣」に終始しがちだけど、仕事の構造から変えないと限界があることを痛感している。特に難しいのがこの3つだ。

1. 通知の非同期化

2026年現在、Slackの「応答が遅い」ことへの許容度はチームによってまだ差がある。うちのチームでは半年かけて「1時間以内返信」から「4時間以内返信(緊急時除く)」にSLAを変えた。最初はマネージャーへの説明が必要だったが、インシデント対応の緊急チャンネルを明確に分けてから、それほど抵抗は出なかった。

2. 深夜作業の構造的な排除

「夜に集中できる」は短期的には本当だが、長期的にはHRVが着実に下がる。自分の場合は以下のルールを設定してから、深夜作業がほぼゼロになった。

# 21:00以降にPCを開くと自動でメッセージが出る設定(macOS Shortcuts)
# 「本当に緊急ですか?」というダイアログを挟む

# ~/.zshrc に追記
alias nightcheck='echo "21:00以降です。本当に必要ですか?" && sleep 5'

# crontab で21:00に実行
# 0 21 * * * osascript -e 'display notification "深夜作業ストップ" with title "セルフケアBot"'

バカみたいに見えるかもしれないけど、「5秒待つ」だけで「やっぱり明日でいいか」となることが多い。習慣化の研究でいう「摩擦を増やす」手法そのものだ。

3. バッファ時間の意図的な確保

pie title "理想の週次時間配分(エンジニア・セルフケア込み)"
    "集中作業" : 30
    "ミーティング" : 15
    "バッファ・整理" : 10
    "学習・読書" : 8
    "運動・外出" : 10
    "睡眠" : 56
    "その他・食事" : 39

「バッファ・整理」の時間を意図的にカレンダーに入れておくことで、予期しない仕事が来ても吸収できるようになった。これがないと、急な割り込みのたびにセルフケア系の時間が犠牲になる。地味だけどこれが一番効いてる気がする。


メンタルの「定期健診」を仕組み化した話

身体の健康診断は毎年義務的に受けるのに、メンタルの状態チェックは自己申告頼みというのがずっと気になっていた。2026年現在、いくつかの手段が使えるようになっている。

PHQ-9(抑うつ症状チェック)の月次記録

9問の標準的なチェックリストをNotion DBに月次で記録している。点数の変化を見ることで、「この時期は要注意」という傾向が見えてきた。フォーマットはシンプルで、こんな感じで運用している。

項目今月スコア先月比
PHQ-9合計5-2
睡眠品質7/10+1
ストレス度4/10-1
エネルギー感6/10+2

点数が8以上になったら「何かを削る」トリガーにしている。これはSlackの通知音が怖くなったエンジニアが回復した話でも触れているが、早めのサインに気づけるかどうかが回復速度を大きく左右する。

産業医・心理士との定期面談

2026年現在、50人以上の事業者では産業医との定期面談が義務化されているが、実際に利用しているエンジニアは少ないと思う。うちのチームでは「月1回15分の雑談タイム」として心理士との面談を希望制で設けるようになった。最初は誰も使わなかったが、自分が率先して使い始めたら少しずつ広がった。

オンラインのサービスとしては、Medilanecotreeのようなプラットフォームが2026年時点でかなり使いやすくなっている。正直まだ「週1で使う」には至っていないが、「何かあったらすぐ使える」状態を作っておくことに意味があると思っている。


まとめ

3年間の試行錯誤から残ったポイントを整理しておく。

続いた習慣に共通していること:

  • 意志力ではなく「構造」で行動が決まる設計になっている
  • 数値化することで「判断の根拠」が生まれた(Oura Ring のHRV・睡眠スコア)
  • 「やること」より「やめること」(深夜作業・通知の即時対応)を先に設計した
  • バッファ時間をカレンダーに先に確保しておく
  • 月次のメンタルチェックをNotionで記録して変化を追う

次のアクション:

  1. まずOura RingかApple Watchで2週間の睡眠データを取ってみる(数値化しないと始まらない)
  2. Slackの通知時間を1つだけ制限する(全部はやらなくていい)
  3. PHQ-9を今日記録してみる(公式PDFで5分でできる)

「セルフケアをちゃんとやろう」という決意より、「気づいたら自然とやっていた」状態を目指す方が現実的だ。エンジニアらしく、仕組みで解決する思考でいくのが一番続く気がしている。

皆さんはどんなセルフケアが続いていますか?特に「深夜の作業をどう止めているか」はいつも気になっています。Xなどで教えてもらえると嬉しいです。

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Untanbaby

ソフトウェアエンジニア|AWS / クラウドアーキテクチャ / DevOps

10年以上のIT実務経験をもとに、現場で使える技術情報を発信しています。 記事の誤りや改善点があればお問い合わせからお気軽にご連絡ください。

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